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佐藤富徳の発表論文リスト

■1997年 6月
「技術課題の根拠及び内容が明らかにされているとして進歩性が認められた事例」知財管理Vol.47
弁理士 佐藤富徳

本件は、本願発明の技術課題1) とされる「ブーミング」2) の根拠及びないようが明らかにされているものと云うべきであり、その解決手段も開示されていると認められるので進歩性が認められ審決が取り消された事例であり、判示内容に賛成する。 
  さらに、判決の実務への反映として、「技術課題」の明細書記載が進歩性判断に占める役割が重要であり、近年富に重要になってきていると考えられるので、現行の審査基準3) とも照らして望ましい実務対応について論ずることとした。

  目 次
    1.対象発明と争点
    2.事実関係
    3.判 旨
    4.研 究
    5.進歩性基準(理論づけ)について
    6.望ましい実務対応
    7.おわりに

■1998年2月
「PCT出願の活用について」知財管理Vol.48
弁理士 佐藤富徳
PCT出願について、主として、クライアントである出願人の立場に立ち、それを活用する場合の特徴とメリットについを経済的、内容的観点から検討し、その結果PCT出願制度を上手に活用すれば、非常に効率的なグローバルな高質出願をすることができることが判明した。
そして、PCT出願をさらに広範囲に活用することを期待するべく、現制度の問題点等についても触れることとした。
最後に、PCT加盟国の増加、PCT出願制度の拡充等により、グローバルな権利化政策に合致すべく、今後ますます日本におけるPCT出願の活用が期待できるものと考えられる。

■1998年8月
「良い明細書の作成方法」パテントVol.51
弁理士 佐藤富徳
良い明細書があって初めて、良い特許が取れることには疑いの余地はなかろう。
良い特許、特に企業の立場に立った良い特許とはどういう特許であるかの基本に立ち返って論じた後、逆に、そこから良い明細書とは如何にあるべきかを明確にし、良い明細書の作成方法について具体的に論じることとした。

目次
1.はじめに
2. 「良い特許」とは?
2.1矛としての効力
2.2盾としての効力(実施の確保)
2.3その他
3. 「良い明細書」とは?
3.1セールスポイントと特許技術の特徴を一致させること!
3.2羨ましがられる/嫌がられる特許
3.3広い特許
3.4強い特許
3.5スキのない特許
4. 具体的方法
4.1開発の人間/特許の人間のやるべきことはなにか?
4.2審判決例の研究
4.3徹底した特許調査
―パテントマップ―
4.4PCT出願の活用
4.5後の先の取り方
―後発メーカーの生きる道―
4.6その他留意事項
5.結論
6.おわりに

■1999年5月
「先願特許発明と後願特許発明との利用抵触関係について」パテントVol.52
弁理士 佐藤富徳

我国の特許法では、先願特許発明と後願特許発明との利用関係1)について規定している(特許法第72条)が、抵触関係2)については法上有り得ないとして規定されていない。
しかし、選択発明、用途限定の発明等の場合、実際に実施する上で不可避的に抵触関係を生じる場合がある。
そこで、このような場合について例を挙げて説明するとともに、どのように権利調整をしたら良いかについて論じることとした。
なお、我国では、特許権は本来的に専用権と排他権の両方有すると考えること(両権説として提起する。)により、国際的に広く認められている排他権説とを対比しつつ、我国の特許法の問題点等にも触れることとした。

目次
1.はじめに
2.専用権説と排他権説と両権説
2.1専用権説
2.2排他権説
2.3両権説
2.4各説の比較
3.利用抵触関係について
3.1外的付加発明の場合
3.2実施態様発明の場合
3.3利用抵触関係にない場合(いわゆる穴空き特許)
3.4選択発明の場合
3.5数値限定発明の場合
3.6用途限定発明の場合
3.7ファンクショナルクレームの場合
3.8マーカッシュ形式の場合
4.利用抵触関係の場合の取扱い
4.1外的付加の利用関係について
4.2内的付加等による抵触関係について
4.3穴空き特許の場合
4.4その他
5.諸外国との比較
5.1米国との比較
5.2欧州との比較
5.3条約との関係
6.結論
7.おわりに

■1999年8月
「先願特許発明と後願特許発明との利用抵触関係について」質疑応答パテントVol.52
弁理士 佐藤富徳
斎藤質問
佐藤論説では、先願特許発明を後願特許発明が利用する場合、先願特許権者は後願特許発明を自由に実施できるか?ということについて、主として論じておられるが、逆に、先願特許発明が後願特許発明を利用する場合、先願特許権者は後願特許発明を自由に実施できるか?ということにについて、質問致します。
もし、判例がありましたら、判例に基づいて御教示して戴けたら有り難いと思います。
さらに、判例と各説との関係についても触れて戴いたらと思います。

回答(斎藤質問)詳細は全文で

市川質問
既に幾つかの論文において、パラメーター発明に関し、特許権の錯綜についての懸念が示されているようです。それからも窺えるように、特許権同士の抵触は、今後、実務上において問題視される場面が増えてくるような気がします。
ところで、特許法が特許権同士の抵触を予定していないのは、直接的には同法39条が重複特許を排除し、また、間接的には同法81条が抵触する意匠権との調整のみ規定しているためと一般には理解されているといると思います。そこで、最初の質問ですが、後願特許が先願特許権と抵触する場合、特に、後願特許発明の実施の態様と先願特許発明の実施の態様が重複している場合、原則通り後願特許権を法39条で排除することはできないものでしょうか?この点、審査基準が39条に関し「実施の態様が一部重複し得るとしても技術的思想が異なれば同一の発明としない」と表明してあることにもご考慮いただき、ご回答いただければ幸いです。
次に、佐藤先生は、抵触し合う先願特許権と後願特許権とが併存している場合の取扱いにお考えを示されているのですが、先願特許権が存続期間満了により消滅した場合の取扱いには言及されていないようです。この点、どのようにお考えでしょうか。後願特許権の存在を理由として、先願特許権者であった者の実施が制限されることになるのでしょうか。それとも、法81条を援用して調整を図るのでしょうか。或いは、他の手段による調整を図ることになるのでしょうか

回答(市川質問)

糟谷質問
省略詳細は全文で

回答(糟谷質問)詳細は全文で

■1999年5月
「国内最高の約30億円の損害賠償等が認められた事例」知財管理Vol.49
弁理士 佐藤富徳
本件は、H2ブロッカーと呼ばれる胃腸薬の製造方法の特許権の侵害に対して、逸失利益として国内最高の25億6千万円の損害賠償及び5億円の不当利得返還請求が認められた事例である。
  本件では、被告の製造方法が特許法104条の生産方法の推定規定1)を受け得るかどうかが争点となったが、東京地裁は推定規定の適用を認め特許権侵害があったと判断し、侵害がなかったならば得られたはずの原告の逸失利益を損害額として認めたため、賠償額が膨らんだものである。
  本件の逸失利益の算定方法は、今回の改正特許法を先取りしたものであり、我が国の本格的プロパテント時代の幕開けを反映したものということができよう。
  さらに、本件に見るように賠償額の高額化に対応した実務の指針にも触れることとする。

■2000年6月
「特許48手物語」知財管理Vol.50
弁理士 佐藤富徳

目次
1. はじめに
2. 心の巻
3. 技の巻(基本編)
4. 技の巻(出願編)
4.1出願
4.2拒絶対応
4.3その他
5. 体の巻
6. おわりに

日本伝統の相撲は、奈良時代、平安時時代には、既に相撲節会として豪華絢爛たる王朝絵巻を繰り広げており非常に歴史が古い。そして、武士の天下となると、相撲は、戦場における組み討ちのための実践の訓練として重要視される様になり、さらに江戸の勧進相撲を経て発展してきたものである。1)日本人が長い期間掛かって熟成した相撲道について学ぶことは、特許に携わる者にとっても意義深いものとなろう。
そこで、相撲に倣って、特許戦略の心技体について論述することとする。特許に携わる者にとって、特許戦略48手程度の技を日頃から朝鍛夕錬して置くことが是非必要であろう。

特許48手の中の1例
【第44手】特許性は“かつかつであっても確実”にクリアすること
一定の特許要件をクリアすれば特許となるのであり、楽々クリアしたからといって、それだけで企業にとって「良い特許」と言うこともできない。
従って、特許性すなわち進歩性を“かつかつであっても確実”にクリアすれば充分でありそれ以上に技術レベルが高くても「良い特許」とは関係ない。権利化を目指す者にとって、この進歩性を“かつかつであっても確実”にクリアするテクニックは必ず身に付けて置く必要があろう。例えば、ハイジャンプで常にバーを引掛けてもバーを落とさないと言う技はプロの技である。宮本武蔵の“見切り”にも通じよう。
特許性をクリアした上で「良い特許」になるためには経済性・権利性が必要とされるのである。従って、特許性が”かつかつであっても確実”に取得した特許は、「良い特許」に繋がろう

■20001年10月
「発明の同一性の判断基準について―統一理論への道―」知財管理Vol.51
弁理士 佐藤富徳

目次
1.はじめに
2.発明の同一性とは?
2.1記号
2.2内包と外延
2.3同一と非同一
3.発明の同一性の現状の取り扱い
3.1特許法の適用規定
3.2発明認定基準
3.3同一性判断基準
4.発明認定における問題点
4.1共通事項
4.2特許要件
4.3侵害要件
5.同一性判断における問題点
5.1共通事項
5.2特許要件
5.3侵害要件
6.発明の同一性の統一理論
6.1発明認定基準 
6.2同一性判断基準
7.具体的な適用例
7.1先願が下位概念で後願が上位概念の場合(特許法39条)
7.2先願発明と後願発明が内在同一、一部重複の場合(特許法39条)
7.3数値限定発明が同一の場合
7.4下位概念発明から上位概念発明が認識できない場合
7.5不完全利用発明、迂回発明について
8.結論
9.おわりに

発明の同一性は、特許要件と侵害要件において、特許法上の重要概念であるにも拘わらず、発明の無体性から、その判断基準を明確化することは容易ではない。
一方、我国の判決、審査基準等においても、発明の同一性の判断基準は、完全には統一的に説明されていない。
また、ボールスプライン最高裁判決により均等論適用基準が判示された以上、今後は、均等論が発明の同一性の判断基準に、どのように反映されていくかも問題となろう。
そこで、特許要件と侵害要件における発明の同一性を統一的に説明できる統一理論(1)を纏めることとする。
さらに、審査段階には均等論が適用されるという考え方と適用されないという考え方が有ることを示し、二つの考え方の問題点についても論及する。

■2001年10月
「審査期間の短縮に伴う知的財産権の戦略」関西特許情報センター振興会ニュースNo.9
弁理士 佐藤富徳

目次
1.はじめに
2.審査請求期間の短縮化の法改正
2.1改正趣旨
2.2改正内容
3.知的財産権の戦略
3.1早期権利化
3.2業務平準化について
3.3ウォッチング
3.4外国における権利取得
3.5ベンチャー企業戦略
3.6公開と発表について
4.結論
5.おわりに

我国におけるプロパテント政策の推進を図るべく、我国の知的財産の保護の強化として、知的財産の「広く、強く、早い保護」1)に向けた一連の法改正が行なわれてきた。
そして、知的財産の早い保護の一つである審査請求期間の短縮化は、既に法改正されており、平成13年10月1日の特許出願から既に適用されている。
そこで、審査請求期間の短縮化に伴う知的財産権の戦略について論じることとする。

■2002年3月
「新自由技術除外説について−キルビー特許最高裁判決に因んで−」パテントVol.55
弁理士 佐藤富徳

目次
1. はじめに
2. 自由技術除外説
2.1判例
2.2学説
3. 空権容認説(新自由技術除外説)
3.1内容
3.2一時的な空権とは?
4. 検討
4.1整合性
4.2自由技術除外説との関係
4.3権利濫用説との関係
4.4自由技術の抗弁との関係
4.5裁判所が行なう自由技術の判断(新規性、進歩性の判断)
4.6自由技術の均等技術(準自由技術)について
5. 結論
6. おわりに
7. 資料

キルビー特許最高裁判決(平成12.4.11)は、特許に無効理由が存在することが明らかであるときは、特許権の権利行使は権利の濫用に当たると判示した。
一方、付与後異議申立制度への移行1)、早期権利化制度の拡充2)、ミーンズ・プラス・ファンクショナル・クレーム発明、パラメータ特許発明、ビジネスモデル特許発明の出願の増加等に起因して、今後は無効理由を有する3)特許の数は増えこそせよ減らないと思われ、無効理由を有する侵害事件をどう取り扱うかは大きな問題となろう。
しかし、無効理由を有する侵害事件が、キルビー特許最高裁判決の権利濫用説で全て解決できるものでもなく、当該判決の恩恵に預かるもの(無効理由を有することが明白である特許)の全体に占める割合は少ないとも言えよう。無効理由としては、特許発明が自由技術に該当する場合が殆どであろう。自由技術とは、公知発明と同一又は、公知発明から当業者想到容易な発明であり、公有財産でもある。
そこで、本論説では、過去の判決で採用例が多い自由技術除外説の弱点を補強した新たな空権容認説(新自由技術除外説)を提案することとし、その妥当性について検証を加えることとする。

出願時の先行文献調査について

■2003年8月25日
「特許性を判断するための先行文献調査を出願前に行うにはどのような調査方法が適切ですか。また、適当な調査件数に絞り込むためにはどのような点に留意すべきでしょうか。」日刊工業新聞
弁理士 佐藤富徳

問題
特許性を判断するための先行文献調査を出願前に行うにはどのような調査方法が適切ですか。また、適当な調査件数に絞り込むためにはどのような点に留意すべきでしょうか。

回答(佐藤富徳)
1.総説
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」の諺通り、出願時調査は特許戦略上非常に重要です。出願時調査(一般の文献調査ではなく、特許文献に関する調査)をすることにより、以下のメリットが考えられます。
(1)類似技術記載の先行文献を発見した場合には、出願時にその類似技術との差を明確にして、特許性を高めることができます。
(2)同一技術記載の先行文献を発見した場合には、出願を断念し、代わりに改良発明の出願をすることにより、無駄な費用削減と有効な権利取得を図ることができます。
2.調査方法
適切な調査方法かどうかは、出願発明をどのような考え方に基づいて検索するかによって決まります。
2.1出願人検索
この調査では、特定の出願人(例えば、ライバル会社)を指定して検索すれば、その人がした先願をリストアップできます。
2.2分類検索
先願には、国際特許分類やFタームの分類が付与されます。この調査では、特定の分類が付された先願をリストアップできます。出願発明が分類によく整合していれば、ヒットする確率は高くなります。
2.3キーワード検索
この調査では、出願発明の特徴を表現する特定のキーワードを指定して検索すれば、そのキーワードを含む先願をリストアップできます。
2.4どのようなデータベースによって調査するか?
ここでは、一般の人が活用しやすいデータベース(検索システム)について説明します。(1)電子情報図書館
誰でもインターネットで特許庁のホームページに無料でアクセスでき、非常に便利です。現在のところ、平成5年以降の公開公報、平成6年以降の公告(特許)公報については、出願人検索やキーワード検索が可能であり、明治18年以降の公開(特許)公報については、Fターム検索が可能です。
(2)パトリス
検索専用のデータベースであり、データ蓄積量が豊富で、最もよく活用されています。出願人検索、分類検索、キーワード検索等の精度の良い検索が行えます。ただし、パトリスは、有料で、インターネットでアクセスするか、または専用の回線で接続します。
(3)その他
外国の特許調査をする場合には、ダイアログ(DIALOG)やインパドック(INPADOC)等の検索システムを用います。
3.適当な調査件数に絞り込むための留意点
上記した検索方法によるヒット件数が1万件を超えれば、読むのが大変であり、如何に適切な範囲に調査件数に絞り込むかが、非常に重要です。そのためには、通常、期間の限定や公報の種類(公開、公告、特許)の限定を行いますが、それでも、件数が多い場合には、検索方法を適宜組合せて件数を絞り込みます。なお、件数を絞り込めば絞り込む程、調査漏れも生じやすい点注意すべきです。
3.1キーワードの掛合わせによる絞り込み
出願発明が、テープレコーダにラジオを一体化させ、さらに内蔵したタイマーをセットすることにより、所定の時刻のラジオ番組を自動的にテープに録音できるようにした技術とします。先ず、キーワードとして、「テープレコーダ」と「ラジオ」とを掛合わせて検索します。それでも多い場合には、「タイマー」、「自動」、「録音」等のキーワードを掛合せることにより、さらに件数を絞り込むことができます。
3.2分類検索とキーワード検索等の組合せ
出願発明が属する分類を検索しても、なお件数が多い場合には、さらに、出願発明の特徴のキーワード(あるいは出願人)をこの分類検索に掛合せることによって、適当な調査件数に絞り込めます。
以上
佐藤富徳―2

■2003年8月25日
「PCT出願の国際段階手続において、パリ条約は規定されていない優先権主張の取下げ手続が規定されていますが、具体的に、どのような場合に優先権主張の取下げ手続を行なえば如何なるメリットがあるのでしょうか?」日刊工業新聞
弁理士 佐藤富徳
問題
PCT出願の国際段階手続において、パリ条約は規定されていない優先権主張の取下げ手続が規定されていますが、具体的に、どのような場合に優先権主張の取下げ手続を行なえば如何なるメリットがあるのでしょうか?

回答
1.優先権主張の取下げ手続規定の概要
優先権主張の取下げ手続は、出願人は、優先権主張を伴うPCT出願が国際段階に係続する限り(優先日から20ヶ月、または30ヶ月)何時でも、優先権主張取下げを受理官庁、国際事務局等に通告することにより行うことができます。優先権主張の取下げの効果として、優先日が繰り下がることにより、手続期間をさらに最大12ヶ月遅らせることができます(PCT規則90の2.3)。
2.優先権主張の取下げ手続のメリットについて
2.1国内移行手続をさらに最大12ヶ月遅らすことができるメリット
PCT出願Aについて国内移行手続をすれば多額の費用が発生します。国内移行手続を行うに足る出願であるかどうかの判断は、優先日から20ヶ月、または30ヶ月では足りず、さらに猶予期間を必要とする場合も生じます。このような場合、国際調査報告によって国際出願日まで基準時(進歩性等を判断する基準となる時)が繰り下がったとしても、特許性に影響が無いこと等不利益にならないことを確認した場合には、優先権主張の取下げ手続により、国内移行手続をさらに最大12ヶ月遅らすことができるというメリットが有ります。
2.2国際調査報告から判断して特許性がない場合、PCT出願Aに基づいてPCT出願Bをすることができるメリット
出願人は国際調査報告の先行文献リストを見て、PCT出願Aの特許性を自主的に判断することができます。特許性が無いと判断した場合、特許性を有するまで、PCT出願Aの発明aの改良発明bをすることが大切です。特許性を有するようになった場合、PCT出願Aを基礎として、なPCT出願Bをすることをお奨め致します。この場合に、優先権主張を取下げて、PCT出願Bについて、実質的に延長された国内移行手続期間を確保できます。例え、優先日から12ヶ月経過していても、優先権主張を取下げて、PCT出願Aに基づくPCT出願Bを行うことができます。優先権主張の取下げと組み合わせたPCT出願は、非常にフレキシビリティが高い戦略を可能にするというメリットが有ります。(図1を参照)
2.3国際公開を遅らすメリット
国際公開の準備期間経過前に優先権主張を取下げると、優先日が繰り下がって、最大12ヶ月国際公開されるのを遅らすことができます。PCT出願Aの特許性、経済性、権利性について評価が定まらないような場合で、かつ国際公開によって発明を公開するデメリットの方が大きいと判断する場合には、リスクは負うが、優先権主張を取下げて国際公開を遅らす戦略も有り得ます。なお、優先日から1年3ヶ月前に優先権主張を取下げると国内出願A0がそのまま係続し得るので、出願公開を回避すべく国内出願A0も取下げて置くべきです。
2.4その他
優先権主張を取下げると、優先日が繰り下がるので、全ての手続期限を遅らせることができます(例えば、国内移行手続に必要な翻訳が間に合わない場合等)メリットが有るが、特許性が無くなる等のデメリットも有るので比較考量すべきです。なお、上記2.1から2.3について、2つ以上組み合わせた戦略も有り得ます。
以上

■2003年8月25日
「ベンチャー企業にとって特許とは?」日刊工業新聞
弁理士 佐藤富徳
「ベンチャー企業にとって特許とは?」
Q:最近、我国の産業再生にはベンチャー企業の育成が重要であるということをよく耳にしますが、そもそもベンチャー企業とはどんな企業のことをいうのでしょうか?
  また、ベンチャー企業にとって特許はどんな位置付けにあるのでしょうか?
A:ベンチャー企業とは、ベンチャー(冒険)を冒してまで新規な分野で新規な事業を起こす企業のことです。さらに、ベンチャー企業は、@起業家の志が高いことA高い成長産業分野であることB強い競争力を有することも満たす必要があると説明されます。そして、このような条件を満たせばベンチャー企業の成功率アップにつながります。
  次に、ベンチャー企業にとっての特許の位置付けの問題にお答えします。
  ベンチャー企業が、商品の特許を取得した上で商品販売をする場合、オリジナリティーのある商品を販売することになり、その企業は、競争力が強い企業ということになります。
  逆に、ベンチャー企業が商品の特許を取得しないまま商品販売をする場合、最初は新規商品として先行していたとしても、競合他社が追従して競争力を急激に失うことにもなりかねません。
  すなわち、特許は、商品のオリジナリティーを保証する役目を果たすと共に競合他社の市場参入を阻止する役目を果たすことになり、ベンチャー企業成功率はアップします。
  そして、商品に特許がある場合、ベンチャー企業が直面する資金面においても、公的機関等の助成金、補助金、融資、ベンチャーキャピタル等の支援を受けやすくなりますので、さらにベンチャー企業成功率はアップします。また、将来は、特許を担保に資金調達を図る道も拓けるでしょう。
  また、早期に資金調達が必要な場合、早期審査制度を利用して早期特許取得する道もありますので、弁理士に是非ご相談下さい。
  このように、特許は、マーケッティング等の条件が満たされれば、強い競争力を保証し得ると共に資金調達問題も解決し得るという一石二鳥の効果を有し、ベンチャー企業の成功率アップにつながると考えられます。
(弁理士 佐藤富徳)
■2004年7月10日(土)青山大学
「特許明細書と論文の比較研究」日本知的財産学会
特許事務所 富士山会 
代表者 弁理士 佐藤富徳

〔抄録〕
特許明細書の書き方、論文の書き方については、それぞれ単独では書いたもの多く見受けられる。
  しかし、今までに特許明細書の書き方、論文の書き方を統一的に論じたものはない。
  この平成16年4月から大学も法人化され、特許等の知的財産権の価値が重視する傾向にあるように思われる。
  このような中にあって、特許明細書と論文について、特許面と著作権面から比較を行い、両者の相違点・共通点を明確にして、科学立国と知財立国を図っていく観点から、これからの特許明細書と論文のあり方を論ずることとする。

 

 

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