商号、屋号と商標の関係
会社を設立する場合、登記にはその会社の名前である商号(trade name)が必要となりますが、この登記の商号と、商標(trademark)とは別個に登録するものとなっており、商号は各市町村の法務局で登録され、商標は特許庁で登録されます。
先ず、商号については、図形、色彩*1などを選ぶことはできず、会社登記をする際に同一市町村内で同じ商号が使われていないことが要件となっています。すなわち、同じ町や市に同じ名前の法人がなければ原則的は登記可能となります。これに対して商標では、同一市町村内に限らず全国的な効力が得られ、文字、図形、色彩などを組み合わせて登録でき、商号と同じ会社名前も商標として登録することができます。飲食物の提供をサービスとするレストランや食堂、宿泊施設の提供を行うホテル、旅館、ペンションなどもその屋号や店舗名で登録が可能です。店舗の新装開店などにおいて店の屋号を変える時にも同様なことが言えます。
起業する場合には、少なくとも商号だけ確保できれば法人登記が可能となりますが、その市町村を超えて営業展開する場合、例えば日本全国からの顧客に対してサービスを提供する場合には、商標権の確保が必要と言えるほど重要です。その理由の1つは、知名度が上がるにつれて、同じ商標や類似な商標で商売を始める者が現れることがあり、その際のけん制のためには、商標登録が最も扱い易い対抗手段となるからです。もう1つの理由は、商標登録を行わずに業務を続けていても、全くの他人が同じ商標の登録を取得してしまうことがあり、その場合には、たとえ先に使用していても権利侵害になる可能性があります。すなわち、商標権侵害の抗弁として先使用権が挙げられますが、これを主張するためには“広く知られ”の要件が必要で、知名度が低い場合には如何に先に商標の使用を開始したとしても差止めや損害賠償を受ける可能性があります。平たく言いますと、商売を先に始め誠実さによってお客様の信頼を得ていても、知名度が低ければ後から商標権を取った他人に“侵害”と言われ、屋号変更の結果をまねくことにもなります。
起業の際には、商号や屋号の選択の時点で、商標調査をするのも重要な作業です。もし将来的にも問題の生じない事業にしたいと願う場合には、新規に開店するお店の屋号や会社の商号が他人の商標に抵触しないように選択することが賢明です。
※商標は商標法で規制され、商号は商法・会社法で規制されています。しかし、場合によっては、商号自体が商標として使用されることもあります。
商号とは?
商号は、会社の名前やお店の名前など、営業をする際に自分を示す為に使う名称のことをいいます。商法と会社法に定められるもので、登記をすると保護を受けられる様になります。「株式会社○○○○」などというのがそうです。また、個人のお店の名前や、会社の営業所の名前なども対象となります。屋号の「□□□□屋」というお店の名前も、登記することで保護されることになります。
なお、平成17年7月26日に公布された会社法及びこれに関連する法律改正により、商号に関する規定が大きく変わりました。一般に「類似商号規制」と呼ばれていたものが、原則として撤廃されたのです。改正前は、同じ市町村内では、同じ営業目的の同一または類似した商号は、登記することも使用することも禁止されていましたが、この規制がなくなったものです。
それでは商号は保護されなくなったのかといえば、そうではありません。改正法施行以後も、同一商号を同一住所に登記することは出来ません。
また、「不正目的の商号使用」は禁止されます。ですから、よく知られている商号を、営業妨害や混同される目的で使用した人には、使用差し止めをしたり、損害賠償の請求をすることが出来ます。
なお、商標と違って、商号の中に図形などを使用することは出来ません。
商標としても使用される商号
商号と商標は、どちらも独占的にその名前を使用出来るという点は同じですが、その対象などに違いがあります。
しかし、その特色を利用したり欠点を補う為に、商号が商標としても利用される例は多くみられます。例えば、「株式会社帝国ホテル」は商号ですが、帝国ホテルで販売されているクッキーの商標としても、ホテル業務のサービスの商標としても登録されて使われています。
帝国ホテル程の知名度と信用があると、名前だけでホテル業務であることは明らかであり、更に、この名前のついた商品には信頼が生まれることになるのです。
商号を商標にするメリット
商標にしても、商号にしても、営業でそれが使用される時は、その名前からイメージされるサービスの内容や信用度、信頼度の高さが大切です。しかし、全く新しい名前では、信用や信頼をイメージさせるようなネーミングをすることは、簡単ではありません。
そこで、先程の「帝国ホテル」の例の様に、既に信用性や信頼性を有する商号を商標として使うことで、その様なイメージを持つネーミングが容易になります。
また、グループ企業などでは、中心となっている企業の商号を応用することで、関連企業の商品やサービスに共通のイメージを与えることも考えられるでしょう。
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